第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
「じゃあ、どうしてここにいるの」
『…知りたい?』
ざぁっと風が吹いて、結木の髪がたなびく。
ほのかにシャンプーの香りがした。
「……別に、話したいなら話せば」
彼女が真っ直ぐに見つめてくる事が、酷くいけないことのような気がして、目をそらす。
『んー…そうだね』
彼女が口を開いた途端、けたたましく鳴り響く着信音。
結木の制服のポケットで液晶がついたらしく、淡い光が洩れている。
『…ごめんね、月島くん。時間切れみたい』
そう言うと結木は、またね、と公園を出て行った。
残された僕は、ぼんやりと彼女の座っていたブランコを見つめる。
空にはいつの間にか満月が昇っていた。