第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
次の日も、彼女はそこに居た。
長いポニーテールが、ブランコの揺れに合わせてふわふわと風に舞う。
「君、暇なの?」
『…まぁね』
そして今日も僕は彼女に話しかけてしまう。
彼女は暗くなりかけた空を見上げながら、ブランコを漕ぐ。
きぃ…きぃ…。
「テスト前なんだけど」
『それは月島くんもでしょ?』
とん、とブランコから降りる足取りは酷く軽やかで。
一瞬返事を忘れて見つめてしまった。
『…私ね、今勉強してる暇、ないんだ』
「……暇なのに?」
くすくすと、彼女は笑う。
『そうだよ。暇なのに、勉強してる暇はないの』
おかしな話だよね。
結木はひとつ、深くため息をついた。
白い息が瞬間、空に咲いて、消えた。