第16章 揺れる髪先 ♥︎ 〜月島蛍〜
12月の空はいつにも増して透き通っている。
吐く息も白くなり始めて、途端に寒さが肌を突き刺していく。
テスト期間も間近に迫ってきて、クラス中パニックの渦の中、僕は特に不安要素も見当たらないから、早々に放課後の教室を後にした。
夜が近づくのが早くなったせいか、早く帰らなければいけない気がしてしまう。
気のせいなんだけど。
ふと、学校から少しの所にある公園のそばを通ると、ブランコの音がした。
きぃ、きぃ…きぃ…。
規則正しくリズムを刻む少し古びたチェーン。
目を見やると、赤いマフラーの上からポニーテールが揺れていた。
「…何、してるの」
今思えば、僕はどうしてあの時彼女に。
結木 心に、話しかけたりしたんだろう。