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Love Delusion…

第2章 雨と涙は同じ色 〜黒尾鉄朗〜



自分の席に腰掛けて、窓の外を見る。

あの日と同じように雨が降って、空はどんよりと重たい。

窓を開けると、湿気を含んだ土の匂い。

『すきだよ』

声にならない声で、呟く。
その言葉は雨に紛れて、自分でも聞き取れなかった。

ぼーっとグラウンドを眺めて、時間が来るのを待つ。
秒針が進む音が妙に大きく聞こえて、たまらずに俯いてイヤフォンで遮った。

途端に、いつも聴いているお気に入りの音楽がループで流れてくる。
何度目のループだろう。
曲が終盤に差し掛かったあたりで、強く肩を掴まれて顔を上げる。

「…来て、くれたんだな」

『黒尾、くん』

あの時と同じように、ユニフォーム姿のままの彼は、酷く安堵したような表情で私を見つめていた。

『…なんで、呼び出したの』

その瞳を見つめ返しながら、問いかけると黒尾くんは、少し気まずそうに目を伏せた。

「……あの時」

「あの時、結木…逃げただろ」

悲しんでいるような、怒っているような。
そんな複雑な顔の黒尾くん。

私は咄嗟に顔を背けた。

『別に、何でもいいでしょう』

可愛げのない返事。
彼に掴まれた肩が、キリキリと痛む。
それが次第に弱くなったかと思うと、再び強く力が込められた。

「…よくねぇよ…。
だって、結木、泣いてたじゃんよ」

…見られていた。
精一杯隠したそれに黒尾くんは気付いていた。

なんて、惨めなんだろう…。

『そんなの、黒尾くんには関係ない。
…話はそれだけ?なら、もう帰るよ』

ちらちらと頭をよぎるのは、黒尾くんに親しく接していた、あの女の子。
あの子のふわふわの茶髪と違って、私は黒髪。
地味な私は、似合わない。



「…勝手に、話を終わらせんじゃねぇよ」

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