第12章 好きの裏返し ♥︎ 〜木葉秋紀〜
木葉の傍まで行って、屋上のドアの鍵を閉める。
これで、私と木葉。
屋上にはふたりきり。
「お前…ほんとどうしたんだよ」
『どうもしてない』
心臓が、痛い。
素直になるのって、こんなにドキドキすることなの?
…知らなかったなぁ。
『ねぇ、木葉』
真っ直ぐに木葉を見つめる。
初めてだな、2秒以上目を合わせるの。
『私…ほんとはね』
ドアにもたれかかりながら、空を見上げる。
つられて木葉も上を向いたのが分かった。
鳥が1匹、悠々と空を舞っている。
『木葉のこと……ずっと、好きだったんだよ』
ぽつり、ぽつりと。
まるで独り言のように呟いたそれは、すとんと私の心に落ちて。
途端に、強く強く、身体が締め付けられた。
「…ッ、俺も……」
木葉が、私を抱きしめてる。
…そっか、同じだったんだね。
ふたりとも、素直になれない。
あの憎まれ口も、少しからかったような対応も、素っ気ないのも、全部…。
好きの裏返し、だったんだ。