第12章 好きの裏返し ♥︎ 〜木葉秋紀〜
『なっ、何で木葉がここにいるのよ…しかも木葉、ユニフォームのまんまじゃん!』
「きゃんきゃんうっせーな…ま、その様子なら、大丈夫そうだな」
ん、と木葉から差し出されたのはコンビニの袋。
『…なにこれ』
「差し入れ」
木葉はそれだけ言うと、じゃあなと手を振って体育館の方へと歩いて行った。
「わぁ、心の好きなお菓子ばっかりだね」
英愛がコンビニ袋を覗きながら、私に笑いかける。
『あいつ、なんで私の好きなお菓子知ってるんだろ…』
「さぁ?いつも食べてるから、わかりやすかったんじゃない?」
英愛は軽く伸びをしてから、今日はもう帰ろうかと私に言った。
私も帰る準備をして、またお菓子を眺めた。
袋いっぱいの、大好きなお菓子たち。
『……こんなに食べたら、太るって…。馬鹿…』
木葉の不器用な気遣いに、お菓子を食べなくても、私のお腹はいっぱいだった。
…早く、素直になれたらいいな。
「頑張れ、心。もう少しだよ」
英愛に励まされて、私はそっと、木葉の靴箱にメモを残した。
ーーー『ありがと』の一言だけだけど、私にしては大進歩でしょ。