第12章 好きの裏返し ♥︎ 〜木葉秋紀〜
結局その日は放課後になっても木葉と話せないままだった。
木葉はバレー部だけど、私は文芸部。
そもそも部活の時間も違うから、部活のあとに話すとなると、私が待ってる形になる。
…それは流石に恥ずかしい。
なんと言ってもバレー部のメンバーに冷やかされるのが恥ずかしい。
赤葦とかはまだいいんだけど、木兎あたりがとても面倒。
ギャーギャー言われるくらいなら、少しの話くらい、次の日に回した方が楽だし。
「そんな見栄なんて捨てればいいのに」
『英愛…簡単に言わないでよ…』
文芸部と言ってもほとんど何もしない。
真面目に出席してるのは、私と英愛だけの部活。
お菓子を食べたり、絵を書いたり、本を読んだり。
顧問の先生がゆるゆるだから、何をしても許してくれる、とても楽な部活。
『…私がもっと可愛かったらなぁ…』
「何言ってんの?心は充分可愛いんだよ、素直になれさえすれば」
英愛はそういうものの、その素直になることが難しいから困ってるわけで。
『無理なんだよなぁ…』
私が机に突っ伏して項垂れていると、部室のドアがノックされる。
「…誰だろうね、こんなところまで来るの」
ぽてぽてという効果音がつきそうなほどゆっくりと英愛が部室のドアを開けに行く。
「あ、木葉…どしたの、こんなところまで」
『…!?』
予想外の人物に、思わず机から立ち上がってしまった。