第2章 雨と涙は同じ色 〜黒尾鉄朗〜
気がついたら外は雨が降っていて、教室は薄暗かった。
扉に寄りかかったまま、座り込んで眠っていたせいで体が痛い。
『…あっ!やばい、荷物…!!』
確か…図書室が閉まるのは、17時30分。
今は……。
『嘘…、18時過ぎてる…』
財布も携帯も、何もかも鞄の中。
通学定期でさえ持っていない。
『あぁあ…どうしよう…』
ひとり、ぶつぶつと呟きながら、教室を出て図書室を目指す。
もう閉まってしまっているはずだけど、それでも自分の目で閉まっているのを確認したかった。
ダメ元でも、開いてないかな…なんて、思った。
「…っ、結木…!!!」
廊下の角を曲がる瞬間、後ろから名前を呼ばれて、振り返る。
そこには黒尾くんがいて、手には…。
『わ、私の荷物…!』
「結木、閉室時間になっても帰ってこねぇんだもんよ…。俺がいなかったら閉め出しだったぜ?」
額にうっすらと汗を滲ませて、彼は二カッと笑った。
『ご、ごめん…なさい。凄い、探してくれたんだよね…私のこと…。ありがとう』
精一杯、黒尾くんの目を見つめて言葉にする。
好きだなんて、まだ言えないけれど…それと同じくらいの気持ちを込めて。
……だけど、やっぱり神様は意地悪なんだよ。
「おーい、テツくーん!!」
黒尾くんの後ろから、声がする。
そっちに目を向けると、ふわふわの髪を揺らして走る、女の子。
「おい、待ってろって言っただろ…」
「だってーぇ」
その様子からは、とても仲がいいのが見て取れる。
私は、黒尾くんの手から無理やり荷物をひったくって、早口にお礼だけ言い、また走り出した。