第2章 雨と涙は同じ色 〜黒尾鉄朗〜
「そんな事言っておきながら、こっそり答え、うつすんだろ?」
いつもクラスメイト達に向ける、いたずらっぽい笑顔を浮かべて、黒尾くんは私を見下ろす。
そんなつもりはなかったけど…。
そういうことにした方が、いいのかな。
「…冗談だよ、そんな困った顔すんなって」
一体私はどんな顔をしていたのか。
黒尾くんこそ、困った顔をして。
私の頭をぽんぽん、と撫でた。
すっかり、思考回路が停止してしまった私は、ガタッと席を立ち上がり、そのまま図書室を後にした。
後ろの方で、黒尾くんが私を呼んだ気がしたけど、そんなの、分かんない。
少し肌寒い空気に反して、頬が熱い。
私の想いなんて、これっぽっちも知らない彼は、今どう思ってるんだろう。
変な子って、思うかな。
荷物そのままにしちゃったな、どうしよう。
廊下を走りながら、そんなことを考える。
開いていた教室に入って、へなへなと座り込んだ。
『……どうしよっかな…』
逃げ出してしまったことを、なんて説明しよう。
うまい言い訳が、思いつかない。
どれもこれも、(あなたが好きです)と言っているようなもの。
いやもしかしたら、もうバレてしまったかもしれない。
『…もう顔見れないよ…』