第11章 私流コーディネート ♥︎ 〜瀬見英太〜
急いで玄関を飛び出して、瀬見くんに連絡を取る。
『ごめん、ちょっと遅れる…と』
自分から言い出した時間のくせに、ほんと申し訳ない…。
そう思いながら、駅までの道を走る。
…しまった。
ヒールじゃうまく走れない…あぁもう私のバカ。
半分泣きそうになりながら道を急いでいると、携帯が鳴る。
瀬見くんからだ。
…あれ、これ、電話だ。
『もっ…もしもし…!』
慌てて通話ボタンを押して、声を上げる。
すると、電話の向こうから少しびっくりしたような瀬見くんの声。
「結木…走ってんの?そんな急いだら危ねぇからゆっくり来い、な?」
その言い聞かせるような優しい言葉に、自然と歩幅がいつもの調子に戻る。
『…うん、ごめん。もうすぐ着くから』
「おう」
それだけで、電話は切れてしまった。
『…急ぐなって言われたけど、ゆっくりはダメだよね』
そう独り言を言って、私は少し早足で歩いた。