第2章 雨と涙は同じ色 〜黒尾鉄朗〜
授業が終わり、放課後に差し掛かる。
私は1人、一階の端にある図書室へと足を運んだ。
図書室の奥の、窓側。
体育館入り口が見えるそこは、私のとっておきの席。
男子バレー部の練習が見える。
黒尾くんの活躍を、ほかの人より少しだけ早く知ることが出来る秘密の場所。
私はいつも、ここから彼を探す。
『…今日は、見えないな』
ため息をひとつついてから、適当にたぐり寄せた宿題を始める。
『……わかんない…』
何がsin、cos、tan(サイン、コサイン、タンジェント)ですか…。全く理解出来ないです。
項垂れたまま呆然と体育館を見つめると、普段と変わらない、男子バレー部の練習風景。
『黒尾くんなら…解けるのかな』