第2章 雨と涙は同じ色 〜黒尾鉄朗〜
6月の空はどんよりと沈んで、重たい空気を滲ませている。
午後の授業はさらに憂鬱さを帯びて、教科書を目で追うのすら億劫だ。
私の席は窓側の一番後ろの、いわゆる特等席。
そこに座っているのが、私。
結木 心。
そして、私の前には、授業中であるにも関わらず、寝息を立てている彼。
男子バレー部キャプテンの黒尾 鉄朗の姿があった。
「おい、黒尾!寝るほど俺の授業が暇ならこの問題を解いてみろ!」
教師からの厳しい叱咤に、黒尾くんはしぶしぶ、眠たい目をこすって立ち上がる。
彼の前には、難しい数式。
私には到底解けそうにない。
そんな問題を、黒尾くんはまるで 1+1 の足し算を解くかのように、スラスラと解いていく。
そんな彼の姿に、クラス中がどよめいた。
私が黒尾くんを好きになったのも、この瞬間だった。