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すうら、すうすう。

第6章 アン・ブーリンとマナーの話 ーHP 、ダンブルドアー


大概の不思議は知っておると言うていい。

言ったらば世の真理に迫る不思議の前髪にさえ手が届くかと思った事すらある。
何せわしは魔法使いじゃからな。しかも魔法使いという魔法使いの中でもなかなかの魔法使いの部類じゃ。

ゴーストなんぞ特別なもんでもないし、付き合いの難しいご近所じゃ空想上の生き物などと言われとる連中とも顔見知り、下手すりゃ死なぬですむ禁忌にも触れた。
お陰で大概の事にゃ驚かんよ。ん?いや、驚かん振りが出来る様になった。これが正しいの。
まあこれは魔法使いでなくとも年経れば誰でも身に付けられる技じゃな。心掛け次第での。歳をとるのも悪くはないものよ。

そんなわしにも、ちょっと困った出来事があった。

怖いだの不思議だのと言うより、マナーの問題じゃな。

つい最近、付き合いづらいご近所に出掛けた折りの話じゃ。

わしは至極上機嫌でイギリスの湖水地帯を歩いておった。あの辺りは気に入りの夜の散歩コースでの。ああいう場所の深更ゆえ寒々しくはあるが、人影がなく気楽なのがいい。

こういうと人嫌いの偏屈じじいのように思うかの?しかし実際、わしはちと周りに人がいる事に飽き始めとる節があっての。静かな一人の時間がこのところやたらと貴重に思えるようになった。これも年のせいかの。

湖水地帯の辺りと言えば、言わずと知れたゴーストの巣じゃ。マンチェスター城の道化師、レーベンスホールの茶色い貴婦人、ラムレー城のレディ・リリー・ラムレーなど有名無名含めて枚挙に暇がない。

この日も何人か、静かに挨拶しあってすれ違ったものじゃ。
思うに一度去った世界に舞い戻るというのは、わしらが考えるよりずっと悩み深い事なんじゃなかろうか。して夜の湖水地帯をさ迷うのは、その物思いにピッタリくるんじゃろうな。
あそこですれ違う連中はわしの知る限り皆大人しく、干渉するのもされるのもごめんといった様子じゃった。ただそっと小さく一礼してすれ違うのみ。

わしとしてもその方が気楽でよいし、敢えてマナー違反を犯すつもりもない。

なかったんじゃがなあ・・・。

その日に限って、わしはちと珍しい相手に行き合うてしもうた。

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