第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
それでどうなったかって?
うーん、何から言ったらいいのかな。
まず、カケジク。あのコはやっぱりアタシのところに帰って来なかった。
校長室に呼ばれてーこれがすっごくダンブルドアらしいイカした部屋なんだよ、ホントーちょっとだけ、カケジクの話をして貰った。
あのコはコックリサンでもオイナリサンでもないんだって。宙の一処を担うスピリット。ブラックフォックス?シルバーフォックス?自分にも詳しくは解らないと校長先生は笑った。
「東洋の不可思議には疎くての。全て解き明かしてやる事は出来んのじゃよ」
先生の目が、話はここまでって言ってた。これ以上聞いても話さないって事。
「じゃがな、慰めではなくルーナ。夜空を見上げればいつでも彼女に会えようぞ。ありきたりな事を言うと思うかも知れんが、今回この件に関しては嘘偽りのない話じゃ」
ウインクした先生の顔にアタシは思わず笑った。ちょっとの嘘と、慰めじゃない真実。何だかそれが凄くダンブルドアらしくて。
ルーピン先生は、学校をお辞めになった。
カケジクの件が原因じゃないけど・・・人狼だって噂が立って・・・人狼だって皆に知られちゃって、学校に居られなくなったんだ。
そこらの事情は、アタシはサッパリわからない。アタシは相変わらずひとりでいるから、噂もあんまり詳しく耳に入んないだよね。
でも今回ばかりは真実を知ってるから。
あの晩確かに先生は狼になったし、アタシたちは襲われかけた。
先生の穏やかで草臥れた目と同じように、凄く怖くて、でも粗暴な優雅さを持ったあの狼の姿を、アタシはきっとずっと忘れられないと思う。
ハーマイオニーには、まだ謝れてない。だってずっと忙しそうで、全然話しかける隙がないんだ。まるで時間を繰越して人の何倍も生きてるみたいに見えるくらい。それにここ二、三日はロンやハリーとしんみりしてるからますます声がかけづらいんだよね。
新学期、また声をかけたいなって思ってる。あの忙しさじゃ休みの間にアタシの事なんか忘れちゃいそうだけど。
双子は相変わらず。
何事もなかったみたいな顔をして、悪戯に精を出してる。アタシは今まで以上に二人が好きになっちゃった。
あの二人なら、人を傷付けるような悪戯をわざわざ仕掛けたりしないってわかったから。