第7章 部屋とYシャツと私
(いい匂い……)
洗濯物を踏み付ける度に、洗剤の匂いが鼻を掠める。何度も何度もそれを繰り返す。
(……なんか……)
ふと、思い返すと改めて思う事。ーー今のこの生活が嘘なのではないかと。つい先日まで、天竜人の奴隷をしていたことが遥か昔のことのように感じる。
「よし……このくらいでいいかな」
全部の服に満遍なく洗剤が行き渡った。その服を1枚1枚水に通して洗剤を洗い流していく。それが終わると、服を絞ってカゴの中に入れる。
「♪〜夢のような毎日 あなたに恋をした日々〜♪」
洗濯をしながら他の奴隷たちと歌った曲。いつか、奴隷でなくなって誰かと恋をすることがあったら……そんなことを思いながら過ごした毎日。1番上のお姉さん奴隷が教えてくれた歌。
(……みんな、どうしてるのかな?)
洗濯物を洗いながら、他の人たちのことを考える。最初の貴族に仕えた奴隷たちは貴族が没落したと同時に、他の貴族の元へと売られて行った。同じ貴族のところへ売られた子もいれば、別々のところへ売られた子もいる。わたしと同じ貴族の元へ売られた子はいなかったが……。
(元気だと……いいな……)
ーあわよくば、幸せになっているといいと思う。