第6章 温かいご飯
「食べていいぞ」
キラーさんはわたしの目の前の椅子に座りながら、穏やかな声で言った。
「……いただきます」
お皿と一緒に置かれたフォークを持って、クルクルと麺を巻いていく。ある程度巻き終わってから、口の中へ入れる。ペペロンチーノの匂いが鼻から抜ける。少しだけしょっぱい味がした。
「おい」
キラーさんが少し慌てた様子で、わたしに声をかけた。
「……すみません……あまりにも美味しくて……」
何年振りかわからない、まともな食事に涙が止まらない。
「……」
黙っていたキッドさんがコートの袖でわたしの顔を拭いた。
「キ、キッドさん」
「……何だ?」
コートで目の前が見てない中、キッドさんの声だけが聞こえる。
「な、何で……」
「……なんとなくだ」
キッドさんの腕が離れる。
「たくさん食え。おれの相棒が作った料理はうめェだろ?」
「……はい」
自然と笑みが溢れる。
「とても……美味しいです」
食べ途中のペペロンチーノを見ながら、わたしは口に出して言った。
「……やっと笑ったな」
「え?」
キッドさんの方を向いて、首を傾げる。
「お前、ずっと笑ってなかった。おれが名前をつけた時も、ずっと」
「そ、れは……」