第6章 温かいご飯
「じゃあ、何か作ってくれよ」
「……全く……」
キラーさんはわたしたちに背を向けた。
「少し待ってろ」
そのまま、食堂に併設しているキッチンに入って行ってしまった。
「あ、あの……」
「あ? あァ、少し待ってろ」
キッドさんはわたしに手を伸ばした。無意識に、体が固まる。
「……」
キッドはわたしの様子を見て、手を引っ込めた。
「あ、あの……」
「何だ」
短く返事を返される。
「えっと、あの……」
自分が何を言いたいのか、わからない。だけど、何か弁明をしなければいけないのではないかと思ってしまう。
「……触られるの、嫌だろ」
「……え?」
わたしは目をパチクリさせた。
「さっき、無意識だろうが身構えてた。嫌なことを思い出しちまうだろ?」
「……」
ーこの人……。
(全部わかって……)
膝の上に置いた手を握り締める。
「……嫌じゃ……」
「ん?」
キッドさんの目がわたしの方を向く。
「嫌じゃ……ない、です」
「……」
わたしは顔を俯けた。
「キッドさんに触れられるのは……嫌じゃないです」
「……」
ーー怖くないわけではない。もしかしたら、いい人のフリをしてまた殴られるかもしれない。それでも、この人のことを信じたいと思った。