第6章 温かいご飯
わたしの過去を察したのか、目の前の男の人は悲しそうに眉根を下げた。
「何か食べたい物はあるか? 好きな物とか……」
「……あんまり……ないです」
わたしは顔を俯けた。ーー今まで、食べたい物を聞かれたことなどなかった。与えられた物をただ食べるだけだった。生ゴミのような物を食べさせられた時だってあった。
「そうか……」
男の人は顔を少し俯けてしまった。
「あ、あの……」
「ごめんな……おれ、気が利かねェから……ナルが今までどんな辛い思いをしてきたのかすぐに察せなくて……」
「そ、そんな……」
男の人は顔を腕で覆って泣き出してしまった。
(なんか……)
ーこの船にいる人たちは見た目はみんな怖いのに、感情豊かで優しい人ばかりだ。今だって、わたしのことを思って泣いてくれている。
「……おい、キラー」
「なんだ」
そんなことを思っていると、隣のキッドさんがキラーさんを呼んだ。
「あれ、作ってくれねェか?」
「今からか?」
キラーさんは声を少し低くして、キッドさんに言った。
「いいじゃねェか」
「今何時だと思ってる? あれを作るのに、どれだけ時間がかかると思ってるんだ」
仮面を被っているから分からないが、恐らく怒っているであろうキラーさんが声を更に低くする。