第5章 自分の名前
こうして、次から次へとキッド海賊団の人たちが名前の案を出してくれた。しかし……。
(どれも……ピンと来ない……)
ー何故なのかわからないが、どの名前もこれだと思うものがなかった。
(せっかく、考えてくれているのに……)
わたしは顔を俯けた。
「……あと、言ってない奴はいるか?」
「……」
誰も手を挙げない。ーーどうやら、全員分の名前が出揃ったらしい。
「待て」
そう思った矢先、赤い髪の男の人がそれを制した。
「おれはまだ言ってない」
そう言うと、立ち上がってわたしの前にズカズカと歩いて来た。
「……」
椅子に座っているわたしと目線を合わせてくれるようにしゃがみ、顔をジッと見つめた。
「……あ、あの……」
「ナル」
「……え……」
「ナル……どうだ?」
「……」
ーナル……。ーーどこか懐かしいような、優しく包まれるような名前だった。
「いい名前ですね」
「どういう意味なんですか?」
船員さんたちが男の人の後ろから聞いた。
「ど、どういう意味も何も……」
赤髪の男の人は少し顔を赤くさせた。
「……“南の海”の方言で“波”という意味がある」
「キラー!」