第5章 自分の名前
「おい! お前ら! 付けるのはおれだ!」
船員さんたちが盛り上がってる中で、赤髪の男の人が大きな声で怒ったが、誰も聞いていない。
「……」
わたしはポカーンとしてしまった。
「……すまない。来たばかりだと言うのに、こんなにうるさくて……」
金髪の男の人がわたしの横に立って、声をかけてくれた。
「い、いえ、そんな……」
「おい、お前ら!」
男の人の低い声が船員さんたちの耳に届いたのか、全員騒ぐのをやめた。赤髪の人も含めて。
「困っているだろう。一人一人、案を出して彼女がいいと思った名前にすればいいだろ」
船員さんたちは目を合わせた。
「おー! さすが、キラーさん!」
「よっ! キッド海賊団の右腕!」
男の人はその様子にため息をついた。
「全く、しっかりしてくれ……」
額を押さえて首を振っている彼を見て、苦労しているのだなと思った。
「じゃあ、おれから発表します!」
勢いよく手を挙げた船員さんがわたしに向かって笑った。
「姉ちゃんは……そうだな、エリーとかどうだ?」
「……エリー?」
その名前に野次が飛ぶ。
「何だよ、そんなのありきたりじゃねェか」
「うっせえ!」
「じゃあ、次おれ!」