第5章 自分の名前
「波……?」
わたしは首を傾げた。
「そうだ。名前の意味は……“幸せが波のように繰り返し訪れますように”ってところだろ」
「……」
ー幸せが……繰り返し訪れますように……。
「おい、キラー……」
鬼のような怖い顔をした赤い髪の男の人が金髪の男の人を睨みつけている。
「なんだ、適当に言ったのに合ってたのか」
「な!?」
今度は顔を赤くしている。
「……ナル……」
わたしはその名前を言葉にしてみた。ーー心地良い。心の中がほっこりと温かくなる。
「……気に入ったか?」
さっきまで顔を赤くしていた男の人がわたしの方を見た。
「はい。とても……」
自分の胸を押さえる。こんな温かい気持ちになれたのは初めてだ。
「気に入りました」
わたしがそう言うと、男の人は満足気に笑った。
「ありがとうございます。えっと……」
この人の名前……そう言えば、聞いていなかった。
「ああ、おれの名前か」
目の前の男の人はニヤリと笑った。
「ユースタス・キッド。〈ひとつなぎの大秘宝〉を手に入れる男だ」
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