第5章 自分の名前
「その人たちは……わたしを人間だと思っていませんでしたから……」
ー人間として扱ってくれた人などいない。気に食わないことがあると殴られたり、何もしなくても殴られたりした。
「そうか……」
周りの人たちは何故だか悲しそうに眉を下げたり、鼻水を垂らして泣くのを堪えてる人もいる。ーー何故だろう?
「おい」
目の前に座っている人がわたしを呼んだ。
「……おれが付けた名前は……嫌か?」
「え……」
わたしは目をパチクリさせた。
「それは……どういう……」
「名前はいるだろ。だが、名前を付ける奴が自分の中で気を許せるような奴じゃなかったら……また嫌な思いするだろ」
「……」
ーこの人はわたしを気にかけてくれているのだろうか?
(今まで仕えてきた人たちより……)
ーよっぽど良心的で、人間味があって……温かい。
「……嫌じゃ……ないです」
目の前の男の人は目を見開いた。そして、歯を見せて笑った。
「そうか」
すると、周りの男の人たちもはしゃぎ出した。
「おれたちが名前つけてもいいのか!?」
「おれ、カレンがいいと思うぞ! 姉ちゃん、見た目の通り可憐で可愛いしよー!」
「あ、ズルいぞ! おれは……」