第4章 普通の生き方とは
「……何だ?」
「買って頂かないと……生きていけないんです」
わたしは顔を俯けたまま、ポツリポツリと口にした。
「……どういう意味だ?」
男の人は歩き出そうとしていた足を止めて、顔だけわたしの方に向けた。
「……わたしはずっと奴隷でした」
ー生まれた時から……ずっと。
「どうやって生きていけばいいか……わからないんです」
ー何を言っているのだろう……。こんなことを話しても惨めなだけなのに……。
「どうしたら……」
「じゃァ、おれの船に乗るか?」
(え……)
顔を上げると、髪の長い男の人の奥に赤い髪の男の人が立っていた。
「……」
ーーオークションハウスにいた海賊の人……。
(無事だったんだ)
わたしは涙で潤んだ目で彼を見つめた。
「キッド、何を言っている」
長い髪の毛の男の人は呆れたように言った。
「……」
(そうだよね……)
ーー普通に考えれば、女を海賊船に乗せるなんて足手まといになるとしか思えない。もしくは、性欲の吐き口か……。
(また、奴隷のような生活を送ることになるのかな……)
ー食べ物が食べれて、安心して眠れるのならそれでいいのだが……。
「いいじゃねェか。たまには」