第4章 普通の生き方とは
男の人はもふもふしたコートをはためかせながら、どんどん近付いてくる。
「おい、キッド!」
「あ? なんだよ、キラー。ただ単に、気が向いただけだ」
赤い髪の毛の男の人は少し大きな口の端を上げ、ニヤリと笑った。
「おい、女」
男の人はわたしに声をかけた。
「は、はい……」
「来るのか、来ないのか、どっちだ。選べ」
「……」
わたしは黙ってしまった。
「どうした?」
「い、いえ、何でもありません」
わたしは慌てて否定してから、この人の瞳をもう一度見つめた。
ー海賊はもっと、強引な人だと思っていた。選択肢なんて与えない。乱暴な人たちだと思っていた。この人も……。
(違うのかもしれない)
そんな簡単に考えていいはずがなかった。普通なら。でも……。
「船に……乗せてください……」
ーわたしの中で、頼れるのはもうこの人以外にいなかった。
彼は満足そうに唇の端を上げた。
「よし、ついて来い」
わたしは2人の男の後について行った。
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