第4章 普通の生き方とは
髪の毛を黒い布で覆い、目立たないように物陰に隠れる。
「……」
誰か来た。細身で、髪の毛は長い。
(細身の方がいいな……)
筋肉があると、何をされるかわからないから。
わたしはサッと道に出て、その人の前に姿を現した。
「こんばんは。今晩、わたしを買って頂けませんか?」
ニコッと愛想笑いをした。顔が引きつらないように注意しながら。
ーーわたしは売春婦をすることにした。奴隷をしていなかった時はこのようにしてお金を稼ぎ、命を取り留めた。
「……」
「いかがですか?」
ー何も変わらない。
相手は何も言葉を発しない。気に入らなかったのだろうか……。
「……いりませんか?」
ー奴隷の時と何も変わっていない。ただただ、惨めなだけだった。
わたしは地面を見た。
ーわたしはずっとこのままなのだろうか?
「お前……」
男の人が声をかけて来た。
「は、はい!」
「おれにそんな趣味があると思って……声をかけて来たのか?」
「……え?」
わたしは目をパチパチとまばたかせた。
「そ、そんなつもりじゃ……」
「生憎、おれにはそんな趣味はない。他を当たれ」
男の人は後ろを向いて、ここから去ろうとした。
「ま、待ってください」
わたしは男の人の腕を握った。