第3章 人の優しさ
ーー最初にいた貴族の屋敷では雑用をしていた。怒られることはあっても、酷い仕打ちをされることはあまりなかったように思う。どちらかと言うと、お手伝いさんのような扱いをしてくれた。
「でも、ある日その貴族は没落してしまい……わたしはヒューマンショップに売られました。14歳の時のことです」
その場にいる人たちは静かにわたしを見ている。
「その後、買われたところは……」
そこまで言って、声が出なくなった。思い出すだけで吐き気がする。地獄の日々が始まりだった。
「そ、こは……」
体が震えてくる。ーー気持ち悪い。
「おい!」
肩を揺すられた。ーー麦わら帽子の少年が肩を掴んだのだ。
「しっかりしろ!」
彼の顔は少し焦ったような顔をしていた。
「話したくないなら、話さなくていい! 無理するな!」
「……」
また涙が溢れてくる。
「わ、たし……」
「大丈夫だ!」
彼は歯を見せて笑う。
「ここにいる奴らはお前のこと、いじめねェから!」
「っ……」
また、涙が止まらなくなってしまった。ーーこんなに人に優しくされたことがない。
「なァ、お前行くとこあるのか?」
「え……な、ないです……」
「ならよ!」