第3章 人の優しさ
「……」
「はい、どうぞ」
麦わら帽子の男の子を見つめていると、黒髪ショートの女性はわたしの目の前にある机の上に飲み物を置いた。
「え……あの……」
「……辛かったでしょ」
「……」
その一言を聞き、涙が溢れた。拭っても拭っても止まらない。
「おい、大丈夫か?」
「……っ……」
麦わら帽子の男の子が声をかけてくれたが、涙は溢れてくるばかりだ。
ーやっと解放された。こんな日が来るなんて、夢にも思わなかった。辛かった。ずっと、死にたいと思っていた。生きる希望なんてなかった。ーーずっと……ずっと、願っていた。
涙で濡れる視界の中で、自分の手を見つめた。
「……あなた、ずっと天竜人のところにいたの?」
揺れている視界の先で、黒髪ロングの女の人が聞いてきた。
「……最初は違いました……」
膝の上で手をギュッと強く握り締めた。
「わたしは……生まれたばかりの頃に、両親に捨てられたんです」
「……捨てられた?」
「はい」
わたしは目を伏せた。
ーー生まれたばかりの頃、育てられないからという理由で孤児院に捨てられた。しかし、そこは……。
「わたしが捨てられた孤児院は……奴隷を育てるところだったんです」
「……奴隷を育てるところ……」
ーー立派な違法行為だ。しかし、世界貴族天竜人もそこから奴隷を買うことがあることから、海軍本部は見て見ぬ振りをして見逃していた。
「10歳の時には、奴隷の世界にいました。でも、最初はとある貴族の屋敷にいたんです」