第3章 2_ハンター試験
「‥別に◆只試験の為の材料を取りに来ただけさ♠」
「‥‥そうですか」
リトは一度止めていた脚を動かし、ヒソカから離れる。
そんな後ろ姿を見ていたヒソカはトランプを指の間に挟めながら唇を動かす。
「―ねえ。君、リトだろ?‥何でそんな格好してるの?包帯まで巻いてさ◆」
「生憎、その名前の人物は知り合いに居ませんし、耳にした事も有りません」
振り向く事はせずに即答するリトに対してヒソカは喉を鳴らしながら笑う。
「嘘はイケないなあ♣だってオーラがそうだもん◆その独特のオーラは今まで逢った中でリトしか居ないからね♥」
ヒソカの言葉に脚を止め、暫し沈黙する。
「‥‥貴方は、僕の邪魔をしますか?(‥オーラ‥?)」
「やっぱりリトだね◆―邪魔なんてしないよ♠そしたら試験中、一緒に居られないからね」
「‥僕は一人で行動します。其れと、今の僕はリターンですから。‥‥余り話掛けないで下さいね‥?」
頭だけ振り返り、ヒソカの眼を見る。
ヒソカもリトの眼を見つめるが、其処に映っている筈の自分の姿は無かった。
リトの姿が見えなくなり、一人になったヒソカは口元にトランプを当て、呟く。
「‥面白くなりそうだ♥‥他にもお客さんが居るみたいだしねえ♣」
***
「‥そう言えばピエロさんは材料を取りに来たと言ってましたね。‥スシという物を知っているという事ですか、‥聞けば良かったですかね‥?」
ふと動かしていた脚を止める。
「(‥あの人、血の臭いが濃かったですね。――嗚呼、其れは自分もか)」
いつの間にか小川の前に辿り着き、ぼんやりと眺めつつ手首に嵌めている腕輪を触る。
そして顔を顰める。
「‥僕、何かしましたっけ?こんな処にまで着いて来るなんて。‥ストーカーですか?」
腕輪を触っていた手を今度は左耳に付けているピアスへ移動させる。
そしてもう片方の手で袖に忍ばせているナイフを掴む。
「何が目的ですか?」
リトが少し殺気を飛ばすと直ぐ傍の木から長身の男が地面に着地する。
「そんなに殺気立てないでよ。ストーカーって‥ヒソカと同じにしないでよ。其れに君だろ?」
喋りながら此方へゆっくりと歩いて来る人間の顔を見る為にリトもゆっくりと後ろを振り向く。