第14章 【切】新しい私の生まれた日/カゲヤマトビオ
「ハルカ、帰るぞ。」
背後に突然現れたクロに両腕を捕まれ身動きの取れない状態に。
「離して!トビオを連れて帰るんだから!」
「まだ目が覚めて三時間と経っちゃいない。力の使い方をわかってないお前がこのまま勇者一行相手にしたらタダじゃ済まない。」
「うるさいうるさい!」
「そんなに慌てなくても、コイツらは来るよ。
じゃあな、勇者一行。」
「やだやだ!トビオ!トビオ!」
クロのマントにより視界を遮られ、私は一瞬で城に戻されてしまった。
「大王様、回収してきましたよ。」
「ありがとうクロ。」
真っ赤な椅子に腰を掛けるトオルのその姿はまるで王様────いや、大王。
「ハルカちゃん、そんなに焦らなくても大丈夫だよ。トビオ達は必ずここに来るから。」
「トビオと離れるなんて無理!生まれてからずっと、ずっと一緒だったのよ!」
「ハルカちゃんもさ、やらなきゃいけない事をやっておこう。」
「やらなきゃいけない事…?」
「ただ殺すだけじゃつまらないでしょ?どうせ殺すなら、もっと最高の舞台で、最高のタイミングじゃなきゃ面白くない。ハルカちゃんだって見たいでしょ?トビオの絶望に満ちた顔。」
大好きなトビオの絶望する姿を想像するとゾクゾクした。そんなトビオの心臓を刳り出したらどんな気持ちだろう。きっと、気持ちがいい筈。
トビオの笑った顔が好きだった。トビオの照れたような顔も好きだった。拗ねた顔も、怒ったような顔も。でも、今一番見たい顔は、絶望に満ちた顔だ。────もう、私は人間に戻れない。
…ℯꫛᎴ