第14章 【切】新しい私の生まれた日/カゲヤマトビオ
「こんな子供にやられるなんてらしくないな、カゲヤマ!」
「うるせえ!」
「カゲヤマ、大丈夫?」
さっきの結界はこの白魔道士か。聖なる結界に触れたせいで私の右手は火傷したみたいに黒く焦げてしまった。
「相手は一人だ。行くぞ。」
「一々指図すんなボケ。」
嗚呼、嫌だ。どうして、どうして、どうして、どうして。トビオの隣にいるのは私の筈なのに。そんな目で見ないで。
「どうした!?」
森の中から現れた人物の姿に私は驚いた。────ハジメ。
「なんでハルカが、」
ハジメに名前を呼ばれた。なんで?ハジメは人間な筈なのに、どうして私の名前を?それじゃあ、まるでハジメは覚えてるみたいじゃない。
「ハジメ、帰ろう。大王様の所に。トビオと一緒に来て。私、耐えられないよ、こんなの。トビオがいないとダメなの。返して。トビオを返して。」
じゃないと、何もかも壊してしまいそうで怖いの。湧き上がってくる破壊衝動を抑えられないの。心がどんどん侵食されていくの。苦しいの。
「悪いな、ハルカ。カゲヤマは渡せねえよ。」
「意地悪なハジメは嫌い。」
手を開くと、私の掌に火の玉が現れた。人間だった頃は、ろくに魔法も使えなかったのに。
「死んじゃえ。」
掌をハジメ達のいる方向へ向け、それを放った。嗚呼、ハジメを殺したら大王様は怒るのかしら?でも、大王様だってハジメが欲しい筈。炎に包まれる彼らを見ながらぼんやりとそんな事を考えた。
「…アンタほんと邪魔ね。」
またもや白魔道士の結界により阻まれた。まだ魔力の使い方がよく分からないせいなのか、彼が優秀な白魔道士からなのか。