第9章 【甘】太陽みたいに笑う君/木兎光太郎
梟谷学園に無事到着。同じ東京都といえど、戸美からは結構距離がある。ケーキの安否を確認し、体育館へ向かい歩いた。すると、体育館を出ようとする赤葦君が私の姿に気付いて、光太郎の事を呼んでくれた。御機嫌な様子で体育館から出てきた光太郎。
「光太郎、お誕生日おめでとう。これ、ケーキ。口に合うといいけど。」
「まじ?手作り?」
「一応。」
袋からケーキの箱を取り出し、その場で箱を開ける光太郎。持ち運んでも型崩れしないよう、持ち運びが簡単という理由で焼いたガトーショコラにかぶりついた光太郎。
「うまい!これ何!?」
「ガトーショコラ。」
「こんな美味いの初めて食った!」
「木兎さん、さっきも同じ事言ってましたよ。」
「赤葦黙って!」
二人のこの漫才みたいなやり取りも私は結構好き。まあ、笑ったりはしないけど。
「じゃあ部活頑張ってね。」
「え?もう帰るの?」
「光太郎部活でしょ。」
「まあ、そうだけど。」
キョロキョロと周りに目をくばせ、赤葦君にしっしっと、手を振ると、赤葦君は溜息をついて体育館へと戻っていった。
「遥香。」
光太郎の唇と私の唇が重なった。甘いチョコの味。
「…ここ、外なんだけど。」
「誰もいないからいいじゃん!」
「バカ。」
光太郎は私の大好きになったあの笑顔を見せた。
光太郎の笑顔を見る度に思う。私は本当に光太郎が好きなんだな、って。