第9章 【甘】太陽みたいに笑う君/木兎光太郎
名前も知らない、どんな人なのかも知らない。ただ、私が知ってるのは太陽みたいに笑う人ってことだけ。
「あの!」
彼の後ろ姿を見つけ、彼を呼び止めた。振り返る彼。黄金に光る丸くも鋭い瞳。彼の瞳に見つめられ、私の心臓はいつもよりも早くリズムをうつ。
「好きです!お名前教えてください!」
キョトンとした顔の彼。それを茶化すチームメイト。一歩ずつ、こちらに近付いてくる彼に鼓動はどんどん加速する。私の目の前に立ち止まった彼は、ニッと笑った。
「木兎光太郎。」
「ぼくと、こうたろう。」
それが私と光太郎の出逢いだった。もう、一年以上も前の話。
なんと驚く事に、その突然の告白をOKしてくれた光太郎とすぐさま交際がスタートした。後に理由を聞くと、可愛かったからと言われたが、それって顔が好みであれば別に私じゃなくても大丈夫だったと言われたようで少し悲しかった。でも、結局の所私も光太郎の笑顔、まあ、つまりは顔に一目惚れしたのだからお互い様。今は勿論、光太郎が顔だけの男じゃないってのは分かってる。バレーに一生懸命な努力家な所、リーダーシップのある所、気分屋な所、褒められると調子に乗る所、長所も短所も全部、全部好き。
「へー木兎君って誕生日秋なんだ。なんか意外。」
「夏っぽいよね。」
「うん、ほんとそれ。なんか裏切られた感。」
「なんだそれ。」
「じゃあ今日は今からデートなんだ?」
「ううん。光太郎は部活あるから。だからケーキだけ持ってく。」
「健気だね。」
「一年の時から広尾君と付き合って、今もラブラブなアンタ達には負けるよ。」
「まあね、私と広尾君は運命だから!」
「はいはい。じゃあ私バスの時間あるから行くね。」
友人と別れ、梟谷学園行きのバスに乗った。