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【WJ】短編

第40章 【甘】マイヒーロー/岩泉一


 岩泉にそのまま手を引かれ、真っ暗な敷地内を歩いた。そして、岩泉は校舎にある一室の窓をカタカタと揺らし、窓を開けた。


「ここ立て付け悪いの直ってなくて助かったわ。」


 そう言ってその開いた窓から校舎の中へ侵入。それを呆気を取られ見ていると、窓から手を伸ばしてきた岩泉の手を掴み、私もそこから校内へ侵入。ここまで来たら岩泉について行くしかない。そして内側から鍵を開け、廊下へ出ると、そのまま岩泉は階段を登って行った。それに私も続く。長い階段を上り終え、辿り着いたのは屋上へと続く階段。その階段の前には立入禁止とチェーンが張られていた。そのチェーンを岩泉は跨ぎ、階段を上ってく。


「立入禁止って書いてあるよ!」
「嗚呼、大丈夫だ。鍵がかかんなくてそうなってるだけだ。」


 三年前に北一を卒業した岩泉が何故それを知ってるのか疑問に思ったが、岩泉の後を黙ってついて行った。そして岩泉が屋上の扉に手を掛けると、岩泉の言った通り鍵のかかってない屋上の扉は開いた。


「うそ…、」


 屋上から広がる街の輝きはこれまで見たイルミネーションなんかよりもうんと綺麗だった。


「ここで二年の時、話した事覚えてるか?」
「え?」
「逢崎に背中叩かれただろ、俺。」
「…ああ。」


 そう言えばそんな事もあった。珍しく弱気でいた岩泉の背中を思いっ切り叩いた。


「あの言葉があったから今こうやって立ててる。ありがとな。」


 特にこれと言って大した事は言ったような気はしない。でも、いつも真っ直ぐ前を見て、男らしい岩泉の背中を叩いて、それが今の岩泉に深く関係しているというなら、案外私はいい事を言ったのかもしれない。


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