第40章 【甘】マイヒーロー/岩泉一
「待たせたな。」
「ううん、私も今来たところ。」
「…じゃあ行くか。」
そう言って、私の右手を取り歩き出した岩泉。中学の時、同じ部活だった岩泉とこうなる日が来る事を一体誰が想像しただろうか。当事者である私自身も驚いている。
同じ部活とは言っても、副主将である岩泉と話す機会がこれと言って多い訳でも無かったし、一際仲が良かった訳でもない。どちらかというと、及川との方が仲は良かったと思う。あんなんでも一応主将だったし、三年間同じクラスでもあった。そんな及川の幼馴染みで親友の岩泉。…これを岩泉本人に言えばアイツと親友になった覚えは無いと否定されるから私の口からそれは言わないが。まあそんな岩泉と及川と仲がいいからといって親しくなる機会が出来た訳では無い。多少話す機会が増えた程度。とは言ってもその会話の殆どというか全てが及川絡み。そんな岩泉とどうしてこういう仲になったのかというと、これまた及川が原因。及川と岩泉はバレーの強豪校である青葉城西へ進学。私は伊達工業へ。伊達工もそこそこ名の知れたバレーの強豪校で、三年間バレー部のマネージャーをしていた事もあったし、工業高校ということで、女子の人数が極めて少なく、女子の部活が盛んで無かった事もあって、私は高校でもバレー部のマネージャーをする事となった。
学校は違えど、そう広くはない体育館。及川、岩泉と顔を合わせる事もしばしば。会えば以前と同じように話す。伊達工と青城の試合でない限りは青城の応援もした。勿論それは心の中で。一年の時はそれで事が済んだ。