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【WJ】短編

第39章 【甘】そのワンコ、野獣につき要注意/灰羽リエーフ


「ほんと、リエーフ君って次郎そっくり。」
「…次郎ってだれっすか?」
「私が飼ってた犬なんだけどね、リエーフ君によく似てるの。」


 そう言って、携帯のフォルダから次郎の写真を見せると、リエーフ君は頬を膨らませた。


「俺、犬じゃないっすよ!?」
「うん、それは分かってるよ。でもね、本当によく似てるの。」


 携帯に映る次郎の姿を見ていると、リエーフ君に手を引かれ、壁に押しやられた。


「り、リエーフ君!?」


 私を見るリエーフ君の瞳は鋭く光っていて、いつも可愛らしい笑みを浮かべるリエーフ君の姿はそこになかった。犬に似てるなんて言ったから怒っちゃった…!?


「俺はちゃんと一人の男として見て欲しいって思ってるんですけど。俺も、遥香さんの事、そういう目で見てるんで。」
「…そ、それはどういう意味…?」


 今までだって近くにいたリエーフ君。この位の距離だって過去に何度もあった。だから、こんなにもドキドキするのはおかしい。なんで私こんなにドキドキしてるの?


「まあ、動物は動物でも、俺は犬じゃなくて野獣って事、ですかね。」


 にやりと笑うリエーフ君に、私の心臓は更に騒ぎ出す。こんなカッコイイリエーフ君を私は知らない。私の知ってるリエーフ君はニコニコと愛嬌のある笑みを浮かべ私の名前を嬉しそうに呼んでやって来る。それが私の知ってるリエーフ君。でも、目の前にいるリエーフ君は彼の言うように野獣めいた願望を抱いた男のリエーフ君だ。


「これ以上道草食ってると、夜久さんに怒られちゃいそうなんで帰りましょうか。」


 そう言って再び私の手を握り歩き出すリエーフ君はいつも通りのリエーフ君だ。だけど、先程の鋭い瞳と真剣な表情が忘れられず、私の心臓は煩く鳴り響いていた。



                 …ℯꫛᎴ

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