第38章 【甘】プレゼントは私/影山飛雄
「まだ悩んでんのかよ?」
「だって、折角の誕生日だし、飛雄の喜ぶ物あげたいじゃん。」
「カレーでいいだろ。」
「カレーを持ち歩くなんて女子高生として如何なものかと。」
頼りの勇太郎も私と同じく恋愛経験値0。私もカレーでいいかな、なんて一瞬思ったけど、カレーを持ち歩く彼女ってどうよ?まあ、飛雄ならあざっす!って言って受け取ってくれるだろうけどさ。女子高生としてのプライドだってある。カレー臭のする女子高生とか引く。
「何ー?遥香ちゃん飛雄の誕生日プレゼント悩んでんの?」
「うわ、及川さん。」
「うわって何さ。遥香ちゃん酷いよ!」
引退した及川さんがこのタイミングで現れた事に思わずうわっと声を漏らしてしまった。引退したとはいえ、仮にも先輩。バレーをしてる及川さんはそりゃあ大尊敬してるけど、バレーをしてない及川さんはちゃらんぽらんしてて苦手だ。プライベートに関しては一切尊敬出来ることがない。
「飛雄の喜ぶ物なら遥香ちゃん持ってるじゃん。」
「え?私カレー持ってませんよ?」
「違う違う。飛雄だって一応男なんだから可愛い彼女にプレゼントは私、なんて言ったら飛雄も喜ぶと思うよ。」
「…うわあ。及川さんそれ、ドン引きです。」
「え?なんで!?」
そんな小っ恥ずかしい事言える訳が無い。なんて思いながら今日の部活も終了。いいプレゼントも思いつかないまま、飛雄の誕生日である二十二日の朝を迎えてしまった。昨日の夜、珍しく飛雄から放課後、部活が終わってから会いたいと連絡が来ていた為、今日は部活帰りに烏野に行く予定だ。烏野に寄る前に何か適当に買ってそれを渡そう。何かしら見れば意外といい物が見つかるかもしれない。