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【WJ】短編

第33章 【甘】そのままの君でいて/爆豪勝己


「なんでそうなんだよ!お前が俺の家で暮らすんだっての!」
「私とお兄ちゃんとお母さんが、」
「デクとオバサンを連れてくんな!」
「私だけ?なんで?私ごはんなんか作れないよ?」
「今から練習しとけ。…ほら、帰んぞ。」


 そう言って差し出された手を握った。勝己君の手は大きくて温かくて安心する。


「ねえ、勝己君。中学卒業してもずっと一緒にいてくれる?」
「当たり前の事聞くな。」
「うん、ごめんね。」
「すぐ謝る癖やめろ。腹立つ。」
「うん、ごめ…」


 勝己君は私に優しくしてくれるけど、それでも怒る時は怒る。そんなの小さい頃から慣れっ子だけど、やっぱり怒られたら怖いし、悲しい気持ちになる。でも、文句を言いながら。時には怒りながらも勝己君は私の手をいうも握ってくれていた。昔はもう片方の手をお兄ちゃんが握ってくれていて、三人手を繋いで歩いていたのに。…懐かしいな。


「…また三人で手を繋いで歩きたいな。」


 過去を懐かしんでしまったせいか、思わず漏れてしまった本音。ハッとして、空いた手で慌てて口を塞いだが、ハッキリと勝己君の耳にその声は届いていたみたいで、また不機嫌そうな顔になってしまった。勝己君にお兄ちゃんと仲良くして欲しい、虐めないで欲しい。そんな話題はタブーなのに。


「…俺だって、いつかは前みたいにならねえといけねえってのは分かってんだよ。クソムカつくけど、いずれはデクが義兄になるんだし、」
「ギケイ?」
「そんなのも分かんねえのかよ。」
「…だって、勉強苦手なんだもん。」
「心配しなくても遥香の成績じゃ雄英のヒーロー科どころか他所のヒーロー科も受かりそうにねえな。」
「これから頑張るんだもん!」
「頑張んなくていいつってんだろ。遥香はそのままでいいんだよ。ずっと俺の隣に黙っていとけば。」


 勝己君がずっと隣にいていい。そう言ってくれた事は嬉しかったけど、私だって頑張りたい。取り敢えず、帰ったら辞書で〝ギケイ〟の意味を調べてみよう。


              …ℯꫛᎴ



 
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