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【WJ】短編

第28章 【甘】ストローに口付け/黒尾鉄朗


「折角なんで、誕生日プレゼントって事で、」


 ポケットの中から小銭を掬い、それを自販機に入れようとした所で、黒尾さんにいいよと断られた。…まあ、よく知りもしない私からのプレゼントなんて貰いたくないか。


「それでいいよ。」


 そう言って、私よりはるかに背の高い黒尾さんとの距離がぐっと近付いた。キスされる…!?そう思って反射的に目を瞑った。が、顔の傍に感じた黒尾さんの気配は、私の唇ではなく、私が手にしたジュースのストローへ。さっきまで私が飲んでいたお気に入りのジュースを飲み、ん、甘いね。なんて言って笑った。てっきりキスされるもんだと思った。てか、キスをされると思って目を瞑った。なんて、恥ずかしい事を…!自分の取った行動が恥ずかしくて、一気に顔へと熱が集まった。


「キスされると思った?」


 にやりという表現がピッタリの笑みを浮かべた黒尾さん。その表情に更に熱くなる。


「思ってません!」


 目まで瞑った私が放った言葉は何の意味も持っていなかった。


「まあ、俺はジュースよりもそっちの方が嬉しいけど。」
「馬鹿な事言わないで下さい…!」
「結構本気なんだけど。」


 突然真剣な顔で私を見つめる黒尾さんに、なんて言葉を返したらいいか分からず、心臓だけが五月蝿いくらいに黒尾さんの言葉に反応していた。


「なーんちゃって。からかってごめんね。」


 そう言って私の頭をポンポンと叩くと、黒尾さんはポケットから小銭を取り出し、それを自動販売機に入れ、私のお気に入りのジュースのボタンを押した。


「じゃあ俺昼練あるから。」


 そう言って黒尾さんは体育館の方へと歩いて行った。



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