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【WJ】短編

第28章 【甘】ストローに口付け/黒尾鉄朗


 自動販売機でお気に入りのヨーグルト味のジュースを購入し、その場でストローをさし、飲んだ。口いっぱいに広がる優しい味が好きで、毎日飲んでいる。紙パックのジュースだから量が少ないのがちょっと悲しいけど、なんて思ってたら、トサカ頭が特徴的な先輩に遭遇。今朝、孤爪君の漏らした言葉を思い出し、思わず、あ、と声が漏れた。それに反応したトサカ頭の先輩こと、黒尾さんが手を上げ、よっ、と声を掛けてくれた。それにこんにちはと頭を下げた。


「一人なんて珍しいね。」
「友達今職員室に行ってて。」


 その友達を待つ間、職員室から近い自動販売機でお気に入りのジュースを買った訳だ。


「それ、いつも飲んでるよね。」
「あ、はい。」


 黒尾さんとは特に仲がいいかそういう訳じゃない。中学一年の時から高校二年生になったこの五年間、何の縁があってか孤爪君とずっと同じクラスということで、顔を覚えられ、たまに話す程度の仲。その程度の仲なのに、黒尾さんにいつも飲んでるよね、なんて声を掛けられ少し驚いた。


「美味しいの?」
「美味しいですよ。あ。」


 再び今朝孤爪君の言葉を思い出した。


『今日クロの誕生日だから、クロに会いたくない。…いつも以上に面倒臭いから。』


「黒尾さん、今日お誕生日なんですよね?おめでとうございます。」


 特に仲がいい訳でもない私が誕生日だという事を知っていた事に驚いたのか、一瞬驚いたような顔をしたけど、その疑問は孤爪君と五年間同じクラスだからという理由が彼の頭にもあったのか、なんで知ってんの?なんて言葉は掛けられず、ありがとうとだけ言われた。


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