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【WJ】短編

第25章 【甘】後ろの席の山口君/山口忠


 山口君を呼び付けた月島君に助けを求めるべく、首を上に上げ、月島君を見た。月島君と目が合うと同時に、月島君は大きな溜息をついた。


「山口に話があるんだって。僕は練習戻るよ。」
「え?俺に話?」


 うわああ月島君なんて事言ってくれてんだボケええ!!まだ話し掛ける気とかそんなの全然なかったのに!これはもう、話を切り出さないといけない状況じゃんか!
 体育館に入って行った月島君に禿げてしまえと心の中で悪口を言った。が、そう思った所でこの状況が変わるわけじゃない。


「逢崎さん、俺に話って何かな?」


 山口君の口から私の名前が出てくるだけでこんなにも気持ちが舞い上がってしまうなんて、重症だ。


「あの、えっと、」


 こうなってしまったからにはもう渡すしかない。ここでやっぱりなんでもありませんでした、なんてそっちの方が不自然だ。私は意を決して、手に取持った箱を強引に山口君に渡した。


「私、家庭科部なんだけど、今日作り過ぎちゃって…山口君誕生日って聞いたから、もし良かったら、って思って…。」


 シュミレーションの中ではスムーズに言えていた台詞なのに、いざ口にしてみると、挙動不審極まりない。そして、山口君はケーキの入った箱を手に取ったまま無言。…やば、やっぱり気持ち悪かったかな…。別に仲が言い訳でもないし、そうだよね。


「…ごめんね、迷惑だったよね。」
「あ、いや、違…くて、その、まさか誕生日知っててくれたなんて思わなくて…ありがとう!」


 少し照れ臭そうに笑う山口君のその表情に私はあの時と同じく撃ち抜かれた。山口君が私にありがとうって言った…!嬉しい…っ!


「山口君、お誕生日おめでとう。それじゃあ、私家庭科室の片付けとかあるから…!また明日学校で!」


 そう言って私は逃げるようにして体育館を去った。よかった…!渡せた…!明日、月島君にお礼言わないと…!でも、なんで私が山口君に用があるって分かったんだろう?


(逢崎さんと話し終えたのか、嬉しそうにプレゼントを抱え、体育館に戻って来た山口。両思いなの明らかなのに、ホント二人共鈍感だよね。)



           …ℯꫛᎴ


2016/11/10 Happy Birthday



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