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【WJ】短編

第25章 【甘】後ろの席の山口君/山口忠


 とうとう来てしまった、11月10日。皆からしてみればなんて事無いただの木曜日。けど、私にとっては1年で最も大切な日。


「うわああ…どうしよう。とうとう来ちゃったよ。」


 私は頭を抱え、今日、これからどう振る舞うべきか考えた。頭の中では何度となくシュミレーションしたが、いざ当日になってみると、どう行動を取るのが自然で、スムーズにいくのか分からなくなった。


「おはよー。」


 その声に肩が思わず飛び跳ねた。


「お、おはよう。」


 後ろを振り向けば、私の後ろの席に鞄を席に置いて、にっこり笑顔を浮かべる山口君。今日16歳になった山口君の笑顔は一段と輝いて見えた。隣にいるイケメンだとクラスだけでなく、先輩達からも人気の月島君が霞んで見える程に。

 山口忠君は私の片思いの相手。ほんの少し前まではただのクラスメイトだったのだけど、熱狂的な月島君ファンである友人に半ば強引に連れていかれたバレー部の試合。あれは春高宮城県代表決定戦の準決勝。クラスでも割とふんわりした雰囲気で、バレーをしてる山口君の姿なんて想像つかなかったのに、ピンチサーバーとして現れた山口君。23-19という、大ピンチぐいんと回る凄いサーブで烏野のピンチを凌いだ山口君に惚れるなというのが無理な話。そのカッコいい山口君の姿に私は見事おちてしまった。ただのクラスメイトだった筈なのに、今や山口君に首ったけ。

 そして今日、11月10日。山口君の誕生日。どうにかして誕生日プレゼントを渡したいのだけど、ただのクラスメイトである私が、いきなり誕生日プレゼントを渡すなんてそれはもうハードルの高い話。気持ち悪がれないか、不審がられないか、不安ばかりが頭を過ぎる。ドキドキした気持ちのまま、誕生日プレゼントを渡すシュミレーションを思い描きながら受けた授業は全く頭に入らなかった。


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