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【WJ】短編

第23章 【切甘(R18)】閉じ込めた恋心/及川徹


「遥香ちゃん先生ありがとう。」
「はーい。怪我しないように気をつけてね。」


 部活中派手に転んだ生徒の手当てを終え、お礼を言って保健室を出て行った生徒に手を振り見送った。

 大学を卒業してすぐ、地元である青葉城西高校に赴任する事が出来、漸く仕事も板についてきた。最初は今時の高校生ってなんか怖いし、上手くやってけるかな?なんて心配もあったけど、歳が近い事もあってか、皆私の事を遥香ちゃん先生と呼んで親しんでくれている。怪我をした生徒や熱を出した生徒の相手は勿論だが、女生徒からの恋愛相談に乗ったりもして、相談されるくらいだから割と信頼されてるのかもしれない、なんて思うと結構充実した生活を送っているのかもしれない、なんて思うようになった。


「遥香ちゃん先生。」


 アイドル顔負けの笑顔で手を振り保健室に来たのは三年生の及川君だった。


「どうしたの?及川君。」
「なんか足やっちゃったかも。」


 そう言った及川君、確かに歩き方がおかしい。


「座って。」


 及川君を椅子に座らせ、足を見る。


「捻挫ね。」
「げ、また岩ちゃんに怒られる。」
「冷やしたらテーピングで固定しましょう。」


 冷凍庫から氷を取り出し、患部に当てる。綺麗な顔立ちなのに、足はそんじょそこらの大人よりも鍛えられている。アイドルみたいな顔立ちなのに、体は立派な男の子だ。


「遥香ちゃん先生。」
「何?」
「いつになったら俺の彼女になってくれる?」
「もう、またそれ?大人をからかわないで。」


 ここに赴任した時からそう言って声を掛けてくる及川君。彼は美形で女生徒からモテる。ここに恋愛相談にやってくる女の子達の想い人の九割が及川君。そんな人気者の及川君にそう言って口説かれるのは悪い気はしない。でも、私は先生で及川君は生徒。私が高校生で及川君と同い年だったなら及川君の申し出に二つ返事だっただろう。でも、実際は先生と生徒。そんな間違えがあっちゃいけない。


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