第21章 【甘】大人の恋愛/越前リョーマ
「あんまり不二先輩と似てないね。」
「そう?似てると思うけどな。」
見た感じは完全に周助お兄ちゃんに似てると思うんだけどな。皆だってそう言うし。
「落ち着きがない。見た目は中学生でも中身は子供だね。」
「はあ!?」
遥香が折角褒めてあげてるのに、掛けられた言葉は思いもしないものだった。ていうか、そんな失礼な事言われたことなくてショックだった。
「遥香より背が小さいくせに…!リョーマ君の方が小学生みたいだよ!遥香の方が大人だもん!」
小学生なのだから、大人だもんって言う発言はおかしかったかもしれない。言ってから思ったけど、訂正するのも恥ずかしい。なんて思ってたら、リョーマ君が小馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「へえ、大人なんだ。」
「そ、そうよ!大人!」
引くに引けなくて、恥の上塗り。
「じゃあさ、俺に大人の恋愛教えてよ。」
「…っ!」
耳元でそう囁かれ、一気に体温が上昇する。意地悪な笑みを浮かべ、桃ちゃんの方に歩いて行ったリョーマ君。心臓が出てきてしまうんじゃないかってくらい、いや、体が心臓になってしまったんじゃないかって位、いつもよりもうんと速く鼓動する心臓の音に体が侵食される。でも、ここで黙っていたら負けたみたいで凄く嫌。五月蝿い心臓の音を無視して、リョーマ君を追いかけ、彼の服を引っ張った。
「…いいよ!教えてあげる!」
リョーマ君はまた意地悪そうな笑みを浮かべ、ちゅっと、触れたか触れてないか、それ位の軽いキスを遥香にした。
「じゃあよろしくね、大人の遥香ちゃん。」
騒ぎ出す周りの声を掻き消す程にさっきよりも五月蝿い私の心臓の音。
「…越前。今のはどういう事かな?」
いつも笑顔の周助お兄ちゃんの眼が開いた。
「そのまんまの意味っスよ、不二先輩。」
嗚呼、ダメだ。多分遥香は一生リョーマ君に勝てない。静かに怒るお兄ちゃんの隣でそんな事を思った。
…ℯꫛᎴ