第21章 【甘】大人の恋愛/越前リョーマ
「周助お兄ちゃん、折角だから少し見て行ってもいい?」
そう尋ねると、周助お兄ちゃんは手塚君を横目で見た。
「別に構わんが、構ってはやれんぞ。」
「うん!」
手塚君のお許しをもらい、そのまま周助お兄ちゃんの部活を見学出来ることになった。いつもカッコいい周助お兄ちゃんだけど、テニスをしてる周助お兄ちゃんはまた一段とカッコいい。だから遥香は周助お兄ちゃんのテニスをしてる姿を見るのが好きだったから、嬉しくて堪らなかった。
「ねえ、桃ちゃん。」
「ん?」
「あの帽子の子一年生でしょ?なんでコートに立ってるの?」
「ああ越前か?アイツレギュラーだからな。」
「え?」
青学こと青春学園はテニスの強豪校。そこで一年生にしてレギュラーなんて…
「青学って選手不足なの?」
その発言に桃ちゃんはまた笑った。
「見てたら分かるよ。」
越前と呼ばれた男の子が打ち上げられたボールはラケットに当たり、秀一郎君のいるコートへ跳んだ。そして、そのボールは相手選手の顔目掛けて飛び跳ねた。初めて見るそのトリッキーなボールの動きに驚いた。そしてボールを返されると、既に彼はそのボールの先にいて…あんなに小さいのに速い…!周助お兄ちゃんや裕太お兄ちゃんとはまた違う彼のテニスから目が離せなかった。
試合は結局、越前君の勝ち。相手は秀一郎君。テニス部のレギュラーで副部長でもある秀一郎君が弱いなんて事は無い。彼が、異様なまでに強いのだ。
「ねえねえ!」
「…何?」
「名前なんて言うの?」
「…越前リョーマ。」
「…リョーマ君!あ、遥香はね、不二遥香って言うの!遥香って呼んでね。」
気だるそうにするリョーマ君にお構い無しでさっきの試合の感想を一方的に伝えた。凄いだとか、カッコいいだとか言って褒めるのに、リョーマ君はちっとも嬉しそうじゃない。