第20章 【切甘】重なる鼓動/孤爪研磨
それから一週間の冷戦状態。いつもなら、休み時間しょっちゅう研磨のクラスに行くけど、研磨と顔を合わせる勇気がなく、そして、日にちが経ってしまったこともあり、余計会いづらくて。そもそも、研磨と一緒にいる時に研磨がゲームをしてる事に対して特に腹を立てたことはなかった。お互い、寄り添えるような雰囲気が好きだったし、別に二人で何かしなくたって、それで良かったのに。私だって研磨とのデート中、雑誌を見たりネイルをしたり、自由にやってた。
「お前らまだ喧嘩してんの?」
「…まあ、うん。」
「早く仲直りしろよ。」
「分かってる。」
虎に言われなくたって、早く仲直りしたいと思ってるし、仲直りしなきゃいけないって分かってる。
「研磨と喧嘩になるなんて思わなかったなー。」
「まあ、デート中もずっと研磨ゲームしてんだろ?今までお前それ良く我慢してた方だと思うよ、俺は。」
別に我慢なんかしてるつもりは無かったけど。研磨と一緒に過ごす時間が心地良かったし。それを不満に思った事は無い。お互い部活もあって部活終わってから何処か出掛けるのは面倒だし。
「お前、アウトドア派なのに研磨と付き合ってからは完全インドアだし。」
「まあね。」
「早く仲直りしろよ。」
「虎しつこい。分かってるってば。」
虎が心配して声を掛けてくれてるのは分かってるけど、そんな何度も何度も言わなくたっていいじゃん。
「…あのよ、お前は分かんねーかもしんねえけど、研磨お前がいないと、ちょっと、その、なんつーか、」
「何?」
「機嫌悪いから。」
「は?」
「だから、部活の時、研磨イライラしてんだって。まあ、部活の時だけじゃねえけど。」
「嘘。」
「嘘言ってどうすんだよ。」
私と喧嘩してあの研磨が機嫌が悪いなんて想像出来ない。けど、そう言われると、ちょっとなんか嬉しくて。私が研磨の機嫌を左右してるなんて思うと、少し気分が良かった。なんか、研磨に想われてるみたいじゃん。
「虎、ありがとう。」
「おう。」
部活終わったら研磨の家に謝りに行こう。