第19章 【甘】ありったけの愛をどうぞ召し上がれ/灰羽リエーフ
十月三十日、日曜日。世間はハロウィンだ仮装だ悪戯だお菓子だなんだと慌ただしく賑わっている中、私は大きな荷物を抱え、彼氏の家へと向かった。今日は彼氏であるリエーフの誕生日なのだ。本当は朝からずっと一緒に居たかったけど、今リエーフは春の高校バレー東京都代表決定戦を控え、毎日部活で大忙しなのだ。練習で疲れてるだろうし、本当はプレゼントだけ渡すつもりだったんだけど、「折角誕生日なのに、遥香さんと一緒に居れないなんて絶対ヤダ!」と駄々をこねるリエーフと孤爪君からの冷たい視線に耐えきれず、お家デートならということで了承した。リエーフが教室を出た後に、孤爪君からにやけ過ぎと指摘された。だって、彼氏からあんな風に言われて嬉しくない訳ないじゃない?それを言葉にした時には既に孤爪君はゲームに没頭し、私の話なんか何も聞いちゃいなかった。
リエーフのお家に着き、チャイムを鳴らすと、ドタドタと慌ただしい足音が聞こえ、勢いよく扉が開いた。
「遥香さん!」
お風呂上がりなのかタオルを首から下げていたリエーフに玄関先でぎゅっと抱き締められた。
「ちょ、リエーフ!ここ外だから!」
強い力で抱き締めてくれるリエーフを叩くと、遥香さんに早く会いたかったから、なんて可愛い台詞を吐き乍離れてくれた。
「リエーフ、髪の毛ちゃんと乾かさないと風邪引いちゃうよ?」
リエーフは私が手に持った荷物を取り、空いた私の手を握った。そしておじゃましますと言ってリエーフの家に上がり、二階にあるリエーフの部屋に。
「リエーフ、それ冷蔵庫に入れてきてくれる?」
「了解!」
適当に座っててと言ったリエーフはまた慌ただしく階段を降りて行き、オレンジジュースとドライヤーを持って部屋に帰ってきた。ドライヤーを受け取り、リエーフの銀色に輝く綺麗な髪にドライヤーをかけると、リエーフは幸せそうに微笑みながらオレンジジュースを飲んだ。