第15章 【甘】弱虫の一歩/西谷夕
『女は度胸!』
冴子ちゃんのよく言う言葉が頭に浮かんだ。夕君よりも四つも年上の私、きっと恋愛対象にもなってない。スタート地点にも立てていない私。叶わなくてもいいから、夕君に気持ちだけでも伝えたい。冴子ちゃんのその言葉に背中を押され、私は意思を固めた。いつまでもうじうじして弱気な私じゃだめだ。冴子ちゃんみたいにカッコいい女になるんだ。
「夕君!私、夕君が好き!」
そう言うと、夕君は足を止めた。驚いた顔。ダメな事は百も承知。
「ごめんね、突然こんな事言って。でもね、私初めて会った時からずっと、」
「すみません。」
最後まで自分の気持ちを口にする前に遮られた。…大丈夫、振られる事なんて最初からわかってた。泣かない。目から溢れ出そうな涙をぐっと堪え、拳を握った。
「今の言わなかった無かった事にして下さい。こういうのは男の方からするもんなんで。」
私の正面に立ち、まっすぐな瞳で私を見つめる夕君。
「俺、まだ高校生だし、…背も遥香さんより小さい。バイクの免許も持ってません。働いてもいません。でも、高校卒業して大学も卒業して、ちゃんと働きます!背だって遥香さんより高くなります!バイクの免許取ってツーリングも一緒にいけるようになりたいです!今はまだ子供だけど、遥香さんのこと好きです。俺と付き合ってもらえませんか?」
その言葉に堪えていた涙が溢れた。それを見て慌てる夕君。
「私でよければ、喜んで。」
…ℯꫛᎴ
2016/10/10 Happy Birthday