第5章 深遠の記憶
目が覚めたら雅紀の匂いがした。
「ニノ…?」
「雅紀っ…」
ぎゅっと抱きついたら、雅紀の腕が俺を引き剥がした。
「ニノちゃん!?ニノちゃんなの!?」
「え…?なに…?」
「あ…カズ…?」
「カズ…?あ…芸名?」
「あ…ニノちゃんだ…」
雅紀がぎゅっと俺を抱きしめてくれた。
「カズのほうか…」
潤の声がする。
「なんで…?いつ入れ替わったの?」
智までいる。
いつ…?
さっきまで雅紀とふたりきりだったのに…
「ニノちゃん…」
雅紀の身体がゆっくりと離れていく。
「よかった…戻ってきた…」
「え…?俺はここにいる…」
雅紀の肩に手が置かれた。
「翔…」
翔がじっと俺の顔を見てる。
「ニノ…いや、これからカズって呼ばせて貰うね」
「え…?なんで?」
「…君の歌声がKAZUって歌手に似てるから」
「そう…なの…?」
でもカズという響きは違和感なく俺の中に入ってくる。
「いいよ…?」
「そっか、ありがとうなカズ」
「うん…」
「どこか、痛いところはない?」
「頭が…少し…」
「うん…他は?」
「大丈夫…」
「…カズ…お前は何歳だ?」
何歳…?何歳だっけ俺…
「33歳…」