第20章 The branched story2
朝から、智はとてもソワソワしてた
リビングの教室の中。
落ち着かない智は、僕の前を行ったり来たり。
革靴のかかとのコツコツとした音が絶え間なく聞こえてくる。
「ねえ、ニノ…これ、変じゃない?」
「うん…大丈夫だよ?」
「…ねえ、やっぱりスーツなんて変だから…」
「変じゃないってば」
後ろの方で、潤と翔は笑いを堪えて俯いてる。
「さ、智のあんな姿初めて見る…」
「な…なんか、可愛いよな…」
もお…他人事だと思って…
「智!ハンカチ持ったの!?」
「あっ…えっと。どこ入れたっけ?」
雅紀に言われて、智はスーツのポッケを一個一個叩いてる。
「もお!そんなんでどうするの!はい、これ」
「あ、ありがとう。雅紀」
「…雅紀?」
「なに!?ニノ、今忙しいから…」
「いや…それ…」
「なに!?」
僕は、ちょいちょいと雅紀の持ってる布を指差した。
「それ、台ふきんじゃないの…?」
「あ……」
雅紀と智は、その布をじーっと見つめた。
「や、やだなあ!智の緊張をほぐそうとして…な?智!」
「えっ…?そうなの?」
「そうだよぉ!ほら、ハンカチは?」
「あっ…えっと…あった!ここだ!」
スーツの右ポッケにどうやらあったみたい。
また後ろで、笑いを堪えてる音がする。
「ま、雅紀まで…」
「緊張が伝染してんのかな…」
昨日から、雅紀もとてもソワソワしてた