第13章 SHELTER-zero-
「おいっ…おいっ…」
目を開けると、知らない男が俺の顔を叩いてる。
「ん…え…?」
「ああよかった…気がついたよ…」
男は後ろを振り返る。
また一人男が現れた。
「智、どうする?」
「連れて行こうよ…多分C地区から流れ着いたんだろ…」
川の畔だった。
俺は、死ねなかったのか…
「雅紀、おんぶできる?」
「ああ…多分な」
後ろに居た男が、俺の腕をとって背負ってくれた。
「すまない…」
「いいよ…」
俺の顔を叩いていた男は、俺の背に手を載せた。
「辛かったね…」
涙が…出てきた。
人の…人のぬくもりって、こんなに暖かだったろうか…
とめどなくあふれる涙を拭うこともできず、俺は泣き続けた。
ごめん…ごめんな…
そっちにいくことはできなかった…
「ここは…どこ…?」
「ここは…B地区だよ」
俺をおぶっている男が答えた。
「C地区よりは暮らしやすい。だからもう、バカなことは考えるな」
そう言って俺を背負い直した。
俺には…まだやることがあるんだろうか。
できることがあるんだろうか。
考えながら、目を閉じた。
濡れた服から滴る水が、男の服を濡らしていく。
悪いことをしたと思いながら、俺は眠りの淵に落ちていった。
【SHELTER-zero- END】